学園の生活

学園の生活

理事・教頭 小林裕子

桜蔭学園の創立100周年を迎え、皆様と共にこの喜びを分かち合える幸せを改めて感じております。関東大震災後の混乱の収まらぬうちに誕生した桜蔭女学校が、大正、昭和、平成、そして令和と四時代にわたって、諸先輩のお力によって守られ、支えられてきたことを思い、深く感謝申し上げます。

100年の長い歴史は、日々の学校生活の積み重ねで作られております。直近の5年間は、新型コロナウイルスの流行により変則的な学校生活を余儀なくされましたが、それも含めて現在の桜蔭の一年間をたどってみたいと思います。

4月の始業式、生徒たちは新しいクラスを早く知りたいと急いで登校いたします。これからの1年に思いを馳せる学年の始まりです。翌日には中高の入学式が行われ、中学1年生240名(令和5年度)の新桜蔭生を迎えます。まもなく高校・中学生徒会長、文化祭企画委員長の選挙が行われ、生徒会活動、文化祭に向けての活動が始まります。朝礼や選挙等は体育館に中高別に集まって行ってきましたが、コロナ下では、放送朝礼や校内映像配信システムを使って各教室のプロジェクターで参加する形をとってきました。

本校では高校2年生まで必ずクラブ活動に参加しており、下級生を指導する高校生、身近に目標となる先輩を持つ中学生双方にとって大きな成長の機会となっております。

5月の半ばにひばりが丘グラウンドで行われる体育大会は、高校3年生が中心になって行われます。6学年がクラスカラーのもとに5つのチームに分かれ、熱い対抗戦が繰り広げられます。練習を重ねた応援団も懸命に競技を盛り上げます。

コロナの影響で、令和2年度は、大会を中止。高校3年生のダンスみのりだけ秋に実施しました。3年度は学年ごとに日を変えて実施し、クラス別得点を本郷校舎に掲示して優勝クラスを最後に決定しました。また4年度、5年度は同じ日に中学は午前中に、高校は午後に大会を実施しました。中学生に高校生の活躍を見せてあげられないのは残念でしたが、グラウンドを広々と使って、工夫をこらした競技やダンスを行うことができ、最後の得点発表では以前と同じように大きな歓声がわきました。

夏休みには、中学1年生、高校1年生がクラスごとに浅間の山荘で合宿を行います。昭和34年より始まった合宿ですが、平成5年には宿泊棟が建てられ、平成25年には最初の山荘を建て替えて新食堂棟が完成し、快適な山荘となりました。令和2年度3年度は実施を見合わせましたが、4年度からは感染対策に注意を払いながら再開しました。事前の授業や調べ学習、まとめにも時間をかけ、中学1年生は山荘合宿の成果を文化祭で発表しております。

中学2年生は夏休みに入ると外部からもコーチを招き、5日間の水泳特別授業を行ってきましたが、令和2年度はコロナのためプールでの授業そのものが実施できず、令和3年度は、東館建替え直前のため、短期間の特別授業となりました。令和4年度、5年度は東館建築中で、プール授業は実施できませんでした。令和5年10月17日に新東館でプール開きが行われ、通常通りの水泳授業が行えるようになりました。6年度の夏には中学2年生の水泳特別授業を復活させる予定です。

2学期の始業式、中学3年生が自由研究を提出いたします。この自由研究は昭和43年以来続いているもので、生徒たちが自由に選ぶテーマはそれぞれの時代を反映して移り変わっておりますが、各自が興味を持った研究テーマを全力で追究してゆく真摯な思いは変わりません。

そして、クラブ・同好会が日頃の活動の成果を発表する文化祭に向け、生徒たちは最後の準備に入ります。文化祭企画委員長のもと、お互いに協力して準備を進めるなかで、まさに桜の「蔭」としての役割の大切さを学んで参ります。令和2年度はコロナのため公演系のクラブが講堂で上演したプログラムを録画し、教室で生徒が鑑賞するオンライン文化祭となりました。3年度は11月に保護者のみお招きする文化祭を行いました。4年度5年度は外部のお客様を迎えることができましたが、東館校舎を建築中ということもあり、入場にはWeb予約をしていただくという形をとりました。

中学3年生は東北地方へ、高校2年生は奈良・京都へという修学旅行は10月の末に行われます。事前に国語・歴史・地理・美術・家庭科などの行き届いた学習をし、現地で自然や文化に触れるという姿勢は今も変わりません。中学3年生は現地で詠んだ俳句、高校2年生は短歌やエッセイをまとめて作品集を作成しておりますが、表紙にも心を配った冊子は大切な思い出となることでしょう。令和2年度、3年度は実施を見合わせました。4年度はバスの定員を少なくし、宿での一部屋の人数を減らすため高校は学年を2つに分けて時期をずらしての3泊4日の旅としました。中学は行き先をしぼり、2泊3日の行程としました。5年度はようやく高校では従来通り4泊5日の行程に戻り、中学は4年度同様2泊3日の行程で実施しました。

11月には中学1年生の授業参観がございます。桜蔭の生活にも慣れ、集中して授業に臨む生徒の姿をご覧いただく良い機会となっております。

年が明けるとまもなく大学入学共通試験が行われ、入試の季節が始まります。高校3年生は6年間で培ったすべての力でそれぞれの目標に向けて着実に進んで参ります。2月1日の本校の中学入試では、中学3年生がさまざまな仕事を担います。凛々しく立ち働く姿は大変頼もしいです。コロナ下で、教職員のみで行った令和2年度3年度の入試は大変で、生徒が手伝ってくれるありがたさが身に沁みました。その中学3年生は、座学はもちろんのこと、音楽・美術・書道の学習のまとめに取り組み、学年合唱や卒業作品を仕上げて中学校を巣立とうとする力が感じられます。

そして3月。8日には高校卒業式が行われます。寂しさはございますが、新しい世界へ羽ばたく生徒を心より応援する気持ちで見送ります。24日の中学卒業式では、力強く成長した中学3年生が、高校生として活躍する期待でいっぱいになります。

学年ごとに自然に親しむ日や見学、授業の一環としての音楽会・英語発表会・ダンス発表会や球技・水泳大会がおこなわれます。講演会でさまざまな分野で活躍なさっていらっしゃる方をお招きしてお話を伺う他に、模擬裁判、キャリア講演会なども開いております。また、歌舞伎・能・オペラの鑑賞もございます。Google東京オフィス見学、TOKYO GLOBAL GATEWAY(英語村)体験も行事として定着しつつあります。高大連携として東北大学、東京医科歯科大学、順天堂大学医学部とつながりがあり、学校で講演をしてくださったり、生徒の希望者が大学に行って見学をしたり、桜蔭卒業の大学生、教職員と交流するなど貴重な機会を得ています。こうしたさまざまな行事を織り込んだ学校生活を通して、生徒達が広く心を開いて謙虚に学び、他の人と協力して責任を果たす喜びを経験する姿を見守れる幸せに感謝いたします。

また学園では防災訓練、防犯訓練の実施、備蓄品の整備や緊急一斉配信システムなど、生徒の安全を守る努力を続けております。

揺らぐことのない伝統を胸に、これからも一日一日の学校生活を大切にして、学園の歴史をつないで参りたいと思います。桜蔭学園がいつの時代にあっても輝き続けることを心より願っております。