卒業生の話

卒業生の話

最近の卒業生(大学生)が本校での学びや経験を通してどのように進路を考えたのか、一例を紹介します。

社会科学系 理工学系 医学系

社会科学系

学園生活を振り返った時に、こと頭に浮かぶのは、大勢の前に立つ機会を多く頂いたことです。生徒会に関わっていたこともあって度々スピーチや代表の言葉を任せていただき、それらは学園生活の中でも特に有意義な経験でした。不特定多数の人に自分の考えを伝える時に、どんな言葉をどんなイントネーションで、アクセントで、表情で発信すれば自分の思いを正確に伝えられるのか、人の心に響くのか。自分の考えに静かに向き合って言語化する時間はとても充実したものでしたし、それを先生方のアドバイスも受けながら他者に届くように丁寧に整えていく作業は学びの多いものでした。

そしてもう一つ、学園生活で忘れられないのは、管弦楽部で指揮者を務めたことです。全くの素人から勉強を始めてスコアを何ヶ月もかけて読み込み、約80人のオーケストラをまとめ、本番では暗譜で指揮を振るという大変な仕事でしたが、本当に貴重な経験でした。音に対する自分の感覚をどう言葉に起こすか、奏者一人ひとりに目を向けるにはどうしたらいいか、プロではない学生オーケストラの公演に「来て良かった」と思ってもらうにはどうすればいいか、試行錯誤の日々でしたが、本番を終えたときの達成感は何にも代え難い思い出です。また、一つの交響曲に真剣に向き合う中で、それまで正直あまり興味の持てなかったクラシック音楽が持つたくさんの魅力に気付けました。深く知る努力をすることで、今まで良さがわからなかったものがとても輝いて見えたという経験は、自分が今理解できないもの、共感できないものも、知識や経験を得れば新たな世界が見えるのだろうという学びになり、同時に、世界は自分の知らないことで溢れているということを自覚しました。人生百年時代、もっともっとたくさんのことを知って好きなものを増やしたいと思ったし、百年かけてもきっと知りきれないものたち全てに敬意を払いたいと強く感じました。

自分の得意分野、就職などを考えて経済系に進学しましたが、楽典や修辞学など学びたいことはたくさんあって、自分の専門外のことも気軽に学べる総合大学は知見を深めるのにとてもいい場だと感じています。高校時代より圧倒的に世界が広がり、理解できないと感じることもありますが、今こそ六年間で得たものを活かす時なのだろうとも感じます。知らないものに対して謙虚にあるかを常に確認し、分かり合えないものを尊重し、自分の心を豊かにする努力を続ける姿勢を、これからも持ち続けたいと思います。

理工学系

小学校の頃から理科や算数が好きで、桜蔭での授業や部活動などを通じて、その興味を掘り下げて楽しく学んでいたため、理系の進路を選ぶことは早い段階から心に決めていたように思います。また、様々な行事や委員会活動での経験などから、「将来は社会や人の役に立ちたい」という思いも抱いていました。

そうして、中学卒業から高校の前半にかけて具体的な進路を考えた時、卒業した先輩方や周りの友人たちからも影響を受けて、最初に思い浮かんだのは医学の道を志すかどうか、ということでした。女性として社会に出て働く上でも医者という職業は魅力的だということ、そして必ず多くの人の役に立つことができるだろうこと、一方で、自分は医学や生物の分野は生理的に苦手だということ、様々なことを考え、悩みました。日々の勉強や周囲の人からの影響もあったとは思いますが、決め手になったのは高校一年生の時の、卒業生を招いたキャリア教育講演会で聞いたお話でした。医者として活躍されている卒業生の方から直接お話を伺うことで、大学に進学したその先でどのような勉強をするのかを具体的に知り、単なる「人の役に立ちたい」という気軽な思いで、苦手であるのが分かっていながら進んでよい進路ではないと痛感しました。そこで、まずは「自分が何を好きで、それをどう生かすのか」ということを考えようと思ったのです。

その時から既に、科学的な知見を世の中に還元する、いわゆる工学系の分野に興味があり、具体的にやってみたいことも朧げながら幾つか心にあったのですが、その他にはどんな分野があってどんな仕事や職業があるのかについて、高校までで習う知識の中で推し量って考えるのは難しい側面がありました。そんな時、今進学している大学では、初めの1、2年で幅広い分野について学んだ後に専門を決めることができると知り、まず目指す進路として定めました。現在まさにその専門分野を持たない形で学ぶ日々を送っていますが、高校生の時には存在すら認識していなかった分野に心惹かれることなどもあり、自分の進路選択は間違っていなかったと感じております。

進路選択の過程も含め、今の進路に進むにあたって必要だった力は、すべて桜蔭での6年間の学びや経験、そして素晴らしい先生方や友人たちによって支えられていたものであったと、感謝の念に堪えません。

医学系

私は小学生の頃から医者になりたいと思っていました。先生方の熱心な授業や課外活動を通して、この漠然とした憧れが、進路として定まっていったように思います。

桜蔭では高校3年では受験科目に応じた履修科目がメインになりますが、高校2年までは幅広い科目を学ぶことができます。私の場合、中学に入学した頃から化学が好きで化学に興味を持っていましたが、学校の授業で生物や物理をきちんと教えてくださったおかげでそれらへの興味も大きくなりました。また、先生方はどの科目も広く深く学べるように工夫して授業を行ってくださいました。在校時は気付きませんでしたが、その幅広い授業が今医学部で学ぶ上で必要だったと実感しています。また、医学部に入学して覚えることの多さに直面していますが、覚えるといえば中学時代の地名ドリルで多くの地名を覚えたことが印象に残っています。そこではただ暗記するのではなく最初に自分で調べ関連づけるというプロセスを学びました。大学での膨大な暗記の際にこのプロセスを大切に勉強しています。

桜蔭は、授業に加え、委員会活動や部活動も熱心に行える環境にあり、それも進路決定への後押しとなりました。例えば、生徒会では教職員の方や外部の方の講演会、文化祭での縁日・スタンプラリーを生徒が主催します。このような活動は多くのことを学ばせてくれました。自分の能力と許容量を把握し必要に応じて他の人を頼ること、最終的な目的や期日を踏まえた上で予定を立てること、適宜報告や連絡をすることなどがとても大切であり、実は難しいということ。それらの困難を乗り越えた上でイベントが無事成功を収めたときの達成感と楽しさ。そして自分たちの運営したイベントで他の人を楽しませたり満足させたりできるという事実とそれがとても嬉しいということ。私は課外活動を通してこれらのことを知りました。特に相手に幸せな気持ちになってもらうことの喜びを知ったことは、医者になりたいという気持ちを強くし、またどんな医者になりたいかを考えさせてくれました。実はあまり時間が無い中高生には課外活動は進路を考える大きなチャンスとなります。桜蔭の課外活動の一番大きな特徴は、途中で妥協せず最後まで細部にも注意を払って丁寧に行うことだと思います。部活動をはじめ、生徒会や文化祭企画委員、体育大会準備委員などは非常に細かく丁寧に仕事をします。予算関係は生徒が1円単位で厳しく審議を行い、イベントは一分単位で予定を立てます。このような丁寧さは将来どのような道に進んでも役に立つと思っています。私は、桜蔭での活動を通じて得たことをいかして、自分のなりたい医療者を目指していきたいです。